ATOS16

イベント情報

第17回AT研究会オープンアカデミックセッション(ATOS17)

日時:2017年10月6日(金)15:30〜17:40、7日(土) 9:30~11:45
会場1:10月6日 山梨大学甲府東キャンパス 情報メディア館4階会議室
会場2:10月7日 山梨大学甲府東キャンパス工学部A3号館5F会議室

講演1. 10月6日 15:30~16:30

題目: 疎行列データの精度保証化と連立一次方程式におけるその活用法

講演者: 尾崎克久(芝浦工業大学)

概要:

数値線形代数に関する数値解法のテストでは、The Suite Sparse Matrix Collection (Florida Sparse Matrix Collection)やMatrix Marketなどのサイトからダウンロードできる多くの疎行列を利用している。Web上では、行列のサイズや疎性に加えて条件数やノルムなどの情報も一部に掲載されている。ただし、ノルムや条件数は見積もりであり、厳密ではないものも存在する。本発表では、ノルムの上限など、精度保証付き数値計算により得られた情報をデータに加える試みについて紹介する。また得られたノルムの上限を用いて、連立一次方程式の数値解に対する精度保証付き数値計算を行う方法とその実験結果を紹介する。

講演2. 10月6日 16:40~17:40

題目: 数値線形代数における反復改良法

講演者:荻田武史(東京女子大学)

概要:

連立一次方程式や行列固有値問題などの数値線形代数は科学技術計算の基礎であり、多様な応用があるため、それらの解を数値計算によって効率的に求めることは重要である。一方で、近年の問題の大規模化や複雑化によって、高精度な解を得ることが困難な場合が生じている。本発表では、問題が悪条件な場合に有効な近似解の反復改良法について議論する。具体的には、連立一次方程式や対称固有値問題を取り上げ、それぞれに対する適応的な前処理技法や反復改良法について述べる。

講演3. 10月7日 9:30~10:30

題目: Polyhedralコンパイラを用いたタイリングパラメータの自動調整およびメモリ階層適応型のチューニングに関わるソフトウェア技術

講演者:佐藤幸紀(東京工業大学)

概要:

システムにおけるメモリ階層の複雑化が進み、システムの潜在的な性能を引き出すためには性能チューニングによりメモリ階層構造に適応することが必須となりつつある。そこで、我々の研究グループでは、ループタイリングによりメモリ階層構造にフィットさせると同時にキャッシュメモリの挙動をモデリングしデータ局所性を最大限活用することを試みている。本発表では、Polyhedralコンパイラを用いてタイルサイズを自動チューニングする機構であるPATTや、動的バイナリ変換により実行バイナリをランタイムに透過的にタイリングする機構であるExanaDBT、キャッシュコンフリクトプロファイラExana-C2Simを紹介し、それらの性能チューニングにおける有用性を示す。

講演4. 10月7日 10:45~11:15

題目: 大規模疎行列を係数行列に持つ連立1次方程式の数値解に対する精度保証付き数値計算

講演者:寺尾剛史(芝浦工業大学大学院)

概要:

正定値対称行列を係数行列とする連立1次方程式の数値解に対する精度保証付き数値計算法について発表する。先行研究では、係数行列が疎行列の場合に対しても、コレスキー分解を用いた直接法とほぼ同等の計算コストで精度保証可能である。この手法は、コレスキー分解の残差の上限と帯幅に依存する定数を用いて、係数行列から原点方向に対角シフトを行う。このとき、シフト量が大きい場合、精度保証に失敗する場合がある。本発表では、コレスキー分解の残差の上限を改良し、より悪条件な問題に対して精度保証が可能となる手法の説明を行う。 また、大規模疎行列に対する精度保証の実装法と数値実験結果を紹介する。

講演5. 10月7日 11:15~11:45

題目: 連立一次方程式に対する高信頼な数値解を求める適応的な手法について

講演者:落合涼太(芝浦工業大学大学院)

概要:

本発表では、連立一次方程式の高信頼な数値解を得るアルゴリズムと関連する保証定理を紹介する。ユーザにより指定された要求精度を厳密に満たしながら、可能な限り精度保証法の計算時間を短縮することを研究目的とする。要求精度として高いものは faithful rounding や rounding to the nearest と呼ばれる(faithful roundingは真値に隣接する浮動小数点数のどちらかを返す)。精度保証アルゴリズムに必要な疑似多倍長計算、高精度残差反復、近似逆行列を用いた適応的なアルゴリズムの設計法を紹介し、数値実験結果を示す。最後に超大規模計算用の高精度計算法に関する現状・ベンチマークについて紹介する。


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