[[ATOS17]]

[[イベント情報]]

*第18回AT研究会オープンアカデミックセッション(ATOS18) [#ce5e505b]

日時:2018年2月23日(金)15:30〜17:40、7日(土) 15:30~17:40 ~
会場:東京大学理学部7号館地下1階007講義室 ~

** 講演1. 15:30~16:30 [#i2813c04]
*** 題目: ポテンシャル計算コードを数式から自動生成するメタコンパイラ [#h821304f]
*** 講演者: 伊藤篤史(核融合科学研究所/総合研究大学院大学) [#c7571c52]
*** 概要: [#i4e29311]
> 物質材料系の分子動力学(MD)シミュレーションにおいて,信頼性を担保する上で最も重要な要素は,相互作用を原子間相対ベクトルの関数として表現するポテンシャルモデルである.歴史的に実験結果を再現するような経験的モデルが数多く提案されてきたが,その殆どは多体力関数となっており,非常に複雑な関数形をしている.また近年はDownfolding法[1,2]などのように,密度汎関数理論(DFT)で求められた原子配置とエネルギー等の組を学習用データとて関数形を最適化する試みがある.これはある種の最適化問題や機械学習を利用したポテンシャルモデルの開発であるが,その際にもポテンシャルの関数形に関しては人間による試行錯誤が必要である.このように,ポテンシャルモデルの精度は関数形を複雑化させることで向上してきたわけだが,それは同時に計算コードの開発を困難にし,MDの普及において障壁となっているのが現状である.
実際に複雑なポテンシャル関数では,力の算出の為の微分操作や計算コードの作成にコストが掛かる.加えて,上述の最適化問題としてのポテンシャルモデル開発おいては,ポテンシャル関数U(r,a)の中に含まれるパラメータa={a_1,a_2,...}による微分∂U(r,a)/∂a_iが必要となるが,パラメータの数が多くなればなるほど,微分作業もコード化の作業も人手には辛くなる.これはモデル開発において関数形の試行回数が上げられない問題を生ずる.
そこで本研究では,任意のポテンシャル関数に対して,微分操作とコード生成を自動的に行うメタコンパイラDifferential Automated Meta-Approach(DAMA)を開発した.本研究で開発したメタコンパイラDAMAは次の機能を有する:
(A) 対象のポテンシャル関数はTeX様のテキスト形式で入力する.
(B) ポテンシャル関数の位置座標やパラメータによる解析的な微分操作を自動で行い,導関数の数式を得る.
(C) ポテンシャルエネルギー,および,(B)で導出された力や応力,それらのパラメータ微分量を効率的に算出する計算コードを自動で生成する.
ただし,ここので「効率的」の意味は必ずしも計算速度が最速であることを意味しない.メタコンパイラDAMAによって,任意の多体ポテンシャル関数から計算コードの生成が瞬時に行えるようになった.これにより,ポテンシャルモデル開発においても関数形の試行錯誤が容易になった.コード開発のコストを下げることで,MD研究の普及と活性化に繋がることが期待できる.

[1] Y. Yoshimoto, J. Chem. Phys., 125 (2006) 184103.
[2] A. M. Ito, Y. Yoshimoto, S. Saito, A. Takayama, and H. Nakamura, Phys. Scr. T159 (2014) 014062. 

** 講演2. 16:40~17:40 [#x0776ac3]
*** 題目: 意思決定のためのシミュレーションにおける自動チューニング技術の重要性 [#yda6a07e]
*** 講演者:松葉浩也(理化学研究所計算科学推進研究機構) [#ccedb85f]
*** 概要: [#s7297ced]
> 世の中の様々な意思決定の中には、シミュレーションによる事前検証が有意義なものがある。例えば設備の点検間隔を決定する例を考えると、設備の劣化がシミュレーションできれば、安全な範囲で最大の点検間隔を選択する助けになる。講演者がチームリーダーを務める理化学研究所AICSの利用高度化研究チームは、シミュレーションの活用範囲の拡大をミッションのひとつとしており、このような意思決定におけるシミュレーションは開拓の余地がある分野と考えている。
意思決定にシミュレーションを活用する場合、意思決定のスピードを妨げないよう、シミュレーションの構築や実行が迅速に実施できる必要がある。本チームでは、シミュレーションの迅速な構築に関してはモデル記述言語に注目しており、迅速な実行に関して自動チューニング技術に期待している。
本講演では、このような意思決定に用いるシミュレーションの具体例、さらに、その意思決定すら自動化する人工知能技術との接続例などを紹介し、活用可能な自動チューニング技術、あるいは今後研究が必要な技術について議論する。


トップ   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS