日時:2023年10月27日(金)16:00〜17:30
会場:山梨大学 甲府東キャンパス 情報メディア館4F会議室
ソフトウェア自動チューニング(AT)におけるユーザプログラムの性能を決定する性能 パラメタの最適組合せ探索に関する研究である。本研究では、機械学習ソフトウェアの ハイパーパラメタの最適化を AT で行う。題材として、(a)ロボット制御における人移動予測プログラム、(b)自然な画像拡大を実現する超解像プログラムを用いる。機械学習では膨大な学習時間を要する。これに対し、スーパーコンピュータの多数 GPU を有効に用いた多重実行を制御する AT ツールを開発した。名古屋大学の不老 TypeII を用いて実行し、題材(a)に対しては、学習済みの類似データを用いることで、更なる AT の実行時間の短縮および学習結果の精度の向上を実現した。題材(b)については、2段階学習方式と並列処理により、実用範囲の AT となる 100-200 倍の高速化を実現した。また、従来専門家が時間をかけて行った場合と同レベルの学習結果を得ることができた。
現在、深層学習を利用することで分子シミュレーションを効率化する手法が、多く現れつつある。その一方、分子シミュレーションを実施した結果を予測可能とするような深層学習モデルの研究は、現在も発展途上である。本講演では、ガラスと呼ばれる物質の分子シミュレーションの結果予測を話題としたい。ガラスの物理学的定義は、「液体を急激に冷やして固まってできる物質」である。従って、見かけはあくまで固体であり、「構造が乱れて、一見なんの空間的特徴もない固体」である。このようなガラスの動力学(どの粒子が時間経過後どれだけ動くのか)を乱れた構造から予測することは長年にわたって困難な課題であり、物理・化学・材料の分野で議論されてきた。この10年弱、このような課題に機械学習が大きな力を発揮することが見出され、使用されるようになっている。講演者は最近、ガラスのシミュレーション結果の高精度な予測を教師あり学習によって可能にするグラフニューラルネットワーク(GNN) モデル BOTAN (BOnd TArgeting Network) を提唱した。 BOTANはガラスを構成する粒子運動および粒子同士のお互いの位置変化(相対運動)を、グラフの頂点と辺上でそれぞれ学習する、10万パラメター級のGNNモデルである。2022年には、複数のガラス動力学予測の深層学習モデルの提案があり、その中でも最高の予測性能を示すモデルとなっている。本講演では、最近、関連モデルの提案者らと共に実施しているガラスの深層学習モデルの国際ベンチマーキングの結果を交えつつ、BOTANおよび関連モデルの特性と可能性を紹介したい。
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